プロジェクト

このプロジェクトは、現代日本の地域コミュニティが直面する過疎や若年人口の流出をふまえ、地域おこしの課題は何か、地方自治体レベルでどのような施策がなされ、また効果や影響があるのか、といった問題関心からスタートしました。特に九州における地場産業を活かした地域おこしと移住定住の取り組みを取り上げ、学的な調査分析をするものです。日本の少子高齢化と伝統的な地域コミュニティ機能の弱まりは、日本政府も地方創生を焦眉の課題として掲げています。そのような地方創生の現場の最前線である、九州各都市の挑戦とその教訓を深く掘り下げた本研究は先進事例として貴重な提言を提供できると考えています。

本研究は2020年10月から3 年間、ドイツ学術振興協会の科学研究費の助成を得て調査代表(コネリア・ライヤー)と博士課程生2名(フランク・ツ、セシリア・ルーシー)が共同で実施します。九州の各県・市町村で地域おこしのビジョンと移住支援、そして新住民と地元住民のコミュニティづくりについて、社会学・人類学・政治学の観点から考察します。

事例としては、九州の4つの自治体を選びました。長崎県波佐見町、佐賀県有田町、福岡県豊前市、大分県竹田市です。フィールドワークやインタビューなどを行って、移住・定住などによるモビリティーズが地方社会をどのように変えてきたか、新旧住民の視点を重視しながら、比較分析します。

コネリア・ライヤーは長年、九州の窯業など工芸や芸術による地域おこしに着眼しており、地場産業を中心とした移住者の役割と地域住民との交流を研究します。竹田市と有田町に住民の方々にインタビューをしたり、参与観察という人類学の調査手法を用いて、祭りや町内会、自治会活動など、まちづくりの活動に参加します。

フランク・ツは政治学の専門を活かして、地域創生政策を分析します。各市町村間の比較、また県や日本政府の施策との関係や、その実施や効果を具体的に研究します。特に深く調べたいと考えている事業は、地域おこし協力隊や観光地域づくりです。

セシリア・ルーシーは人類学者として参与観察という手法を用い、豊前市と波佐見町に住み込んで、移住者の体験を詳細に研究します。住民の方々にインタビューをしたり、祭りや町内会活動などまちづくりの活動に参加しながら、移住者の日常生活、地域住民との交流や関係づくり、そして地域おこしへの貢献などを調査します。